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経費はどちらで落とせるのか?領収書とレシート、それぞれの違いを解説

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経費精算では、領収書・レシートどちらで処理する方が良いのでしょうか?それぞれの違いをしっかりと把握できれば、経理上の処理は円滑に進み、経費申請のトラブルを減らすことも可能です。本記事では、領収書とレシートの違いから経理・税法上それぞれの扱いを解説します。

領収書とレシートの違いとは

領収書とレシートの明確な違いはあるのでしょうか?曖昧になりがちなそれぞれの「違い」について、まずはハッキリとさせていきましょう。

違いは「宛名」の記載の有無

領収書とレシートの明確な違いは、「購入者」である「宛名」記載の有無です。どちらにも店名・購入日・商品やサービスの価格などが記載されていますが、領収書にはこれらの情報に加え「宛名(購入者名)」が記載されます。両者の違いはこの一点のみと言っても良いでしょう。

また、宛名が無い場合は経費として認めない組織もありますが、基本的にはどちらでも経費処理を受理するルールが一般的です。それぞれ一長一短の特徴があり、レシートは業務上で利用したものか判別し難い、領収書は偽造ができるので証拠としての信用性が低いなど、解釈も様々です。それぞれの扱いは組織のルールによって異なりますので、まずは双方の「違い」を把握しておくことが大切です。

海外では呼び名は同じ「Receipt」

海外に目を向けると、領収書もレシートも同じ「Receipt」という呼び名です。とはいえ実際に海外には領収書発行の文化はありませんので、基本的にはレシートでのやりとりとなります。海外事業部などのある組織の場合は、この点を把握したうえで経理上の社内ルールを整備することをおすすめします。

領収書とレシートの扱い

それでは社内での運用をスムーズに行うために、領収書とレシートの経理処理上・税法上の扱いを確認していきます。相互のバランスを考慮の上、社内ルールづくりの参考にしてみてください。

経理、税法の観点において、どちらも有効

規定は組織によって異なりますが、一般的には領収書もレシートも経理上は有効としている場合がほとんどです。必要な情報が印字されており、偽造することが難しいレシートの特性から、多くの組織ではレシートも経理処理の有効な証拠として認めています。

また、印鑑がない領収書やレシートを経費処理の際に受理しない場合もあるようです。しかし特に国内での法律等はなく、実際は捺印のないものでも税法上問題はありません。社内で印鑑を貰う規定を設けている場合を除いて、経理上の取り扱いはどちらも大きな違いはないと考えて良いでしょう。

税法上の領収書とレシートの扱い

税法上において有効な領収書の定義は「金銭又は有価証券の受理を証明するために作られた受取書」とされています。一方でレシートも「取引年月日」「金額や明細」「支払先」などが記載されていれば、同じく有効な証明として取り扱うことが可能です。

また、企業間の取引に使用されることの多い書面として「納品書」がありますが、こちらは「納品時に金銭の受け渡しが確認できない」という理由から、原則有効性が認められていません。あくまで納品を証明するのが納品書ですので、納品後の支払いを行う場合もあるため、多くの場合は領収書やレシートとは違うものとして扱うことが一般的となっています。

領収書は不要なのか?

「レシートも経費証明として有効である」というと、領収書は不要であるかのように聞こえますがそうではありません。あくまで社内規定上問題なければ領収書は不要ですが、消費税法上では「宛名」が必要。また、税務調査上では宛名を記載することを推奨しています。

つまり、正式には宛名があった方が良いとされていますが、宛名記載が不要な例もあります。それは、小売業・旅客運送業・旅行業・飲食業・駐車場業などを利用した場合。この場合は宛名記載が不要とされていますので、営業活動など社員経費のほとんどの場合は領収書でなくてもOKです。例外業種以外の支払いや、仕入税額控除の要件として必要な場合は、領収書があった方が良いと言えるでしょう。

経理・税法上の必要性を基に、社内規定の整備を

領収書とレシート、双方の違いは把握できたでしょうか。ここでは、違いを踏まえたうえでの社内の規定整備について、ポイントを整理しておきます。

税法上問題なれば、経理処理しやすい規定がベター

税法上、または税務調査上に不具合のない運用が可能であれば、社員の経費計上はレシートでも可とするなど、現場にも配慮した規定にすると良いでしょう。業種にもよりますが領収書発行に社員が慣れていない場合もあり、店舗によっては発行の手間も掛かるもの。大きい領収書もあることから、経理処理や保管にも手が掛かることもあります。一方でレシートであればほとんどの業種で即時発行を受けられ、領収書に比べ保管も容易です。

経理処理の仕組みは現場・バックオフィス、双方の業務にも負担が掛かる部分です。だからこそ、しっかりと税務上などの問題が無いかを確認したうえで、シンプルで容易な方法を規定することが良策だと言えそうです。

領収書やレシートの発行が無い場合の対処も想定しておく

電車やバスなどの公共交通機関や自販機での購入、慶弔費などの支払いに関しては領収書などの発行がないため、事前経費申請の対処を考えておく必要があります。例えば電車やバスなどであればICカードの導入やプリペイドカードの使用によって、支払い証明が容易になるはずです。

また、慶弔費等に関しては出金伝票での管理をすることも可能です。エクセルなどで日付や金額など必要事項を入力し、可能であれば画像など他の証明とあわせて保管しておきます。領収書やレシートに比べると信用性が低くなるため、金額が大きくなる場合などは他の方法も併用して運用を考えると良いでしょう。

7年の保管義務を考慮し、社内管理方法も検討するべき

領収書やレシートの保管は義務付けられているため、管理方法についても事前に考えておく必要があります。保管義務のある期間は、法人の場合は規模に関わらず、法人税申告の期限より7年間。書類にすると膨大な量となりますので、保管場所や管理方法、いざという時の調査の手間が必要になることも想定し、決定する必要があります。

対策のひとつとしては2016年の税制改正に伴って可能となった、電子データでの保管です。この法改正によって、領収書やレシートをスキャンした画像のほか、WEB上で発行されるPDFでの領収証などもそのままの管理・保存が可能になりました。電子データの場合は過去の調査が必要な場合も、検索するだけで見つけることができ手間が掛かりません。現在では経費処理をサポートするアプリやクラウドサービスなども多数リリースされていますので、社内業務DX化の一環として利用を検討してみること先々の役に立つでしょう。

まとめ

領収書とレシートの明確な違いは「宛名」の記載の有無にあります。また、業種ごとに領収書が必要な場合もありますが、現場の経費清算に関してはレシートで受理していることが一般的です。

それを踏まえたうえで社内ルールの整備をする場合は、税務上などのリスクを想定した可能な限り簡潔なルール整備し、その際に提出された膨大な量の領収書やレシートの管理方法もしっかり考えておくことが重要です。