電帳法

改正電帳法への対応で困ったこと、専門家に聞いてみた。Vol.01

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本記事では、改正電帳法に関して税理士監修のもと、「確かにそれってどうなるの?」と思ってしまうような質問にわかりやすくお答えします。全3シリーズであらゆる質問にお答えするので、改正電帳法の応用部分について理解を深めることができます。

今回と次回のVol.02では、電帳法の対象書類に関する保存方法について、様々なケースを想定したQ&Aを紹介します。

立替精算時の書類提出方法は?

改正電帳法への対応において、立替精算時に考えられる懸念点として、以下のようなものが想定されます。

  • 黒塗りしてもよいのか
  • 明細の内訳が不明瞭でもよいのか

これらについて、例を用いて順に回答していきます。

Q. 経費精算のときに電子データで受領した請求書に一部私的利用のものが入っている場合、今までは紙に印刷して私的利用部分を塗りつぶして提出してもらっていたが、電帳法の改正後はどのように提出すればよいですか?


原則として、電子取引を行った際に受領した電磁的記録の変更は認められません。しかし、事務処理規程で真実性を確保できる場合については、その変更内容等を規程に沿った申請を行い、その変更内容を記録・保存しておくことで、私的利用部分を塗りつぶした電磁的記録を提出することは可能だと考えられます。ただし、実際に業務フローに落とし込むと工数が著しく増加するので、現実的には難しいと思われるため、業務利用と私的利用のものは分けて購入することをおすすめします。

Q.スマホで領収書等を撮影し、クラウドの経費システムを利用して経費申請をしているが、領収書等のサイズが大きく、一部切れた画像で提出されることがあります。領収書等で必要な事項は確認できるようになってはいるものの、請求明細の内訳が見切れている状況です。問題ありますか?


請求明細(内訳)が欠けている場合は、原本と同一の内容とは言えないため、請求明細が欠けていない状態の画像を再提出依頼する必要があります。どうしても見切れてしまう場合は、欠けた画像で申請、承認などを行った後、原本を提出してもらって紙で保存するようにしましょう。

同じ書類が別仕様で2つあるときは?

同じ内容の書類でカラーとモノクロのものが存在してしまったり、PDFで受領したものと郵送で受領したものの2つがあったりと、一体どれを保存するのが電帳法への対応として適切であると言えるのか迷うケースがあると思います。これらについて例を用いてご説明します。

Q.電子データでモノクロの請求書を受領し、その後に紙でカラーの請求書を受領しました。金額など内容が同じものであっても、「同一のものとは言い切れない」と判断されるのでしょうか?また、どちらを保存すればよいですか?


カラーであることが取引情報を補完するものである場合は、それぞれ保存が必要になりますが。取引情報を補完するものでない場合は、どちらかを保存すれば問題ありません。

Q. メールにてPDFの見積書を受領した後、郵送でも同じ内容のものを受領しました。この場合、先に受領したPDFを改正電帳法に対応して保存しなければならないですか?


当事者間で電子データを原本とするとの取り決めがあれば、PDFを電子データとして保存する必要があります。書面と電子データで全く同一のものを受領した場合は、当事者間や業界の慣習や業法などにより、電子データと書面のうち原本として取り扱うことが決まっているものを原本として保存することになります。

参考:2021年11月 国税庁「お問合せの多いご質問」Ⅲ【電子取引関係】電取追1

書類に書き込み等をしたいときは?

電子で受け取った書類への書き込みの是非について、書き込みをした後の流れについても解説します。

Q. PDFの電子取引データにAdobeの機能を使用して書き込みを行って保存してもよいですか?また、承認のための電子印を追加して保存しても電子データの原本として認められますか?


PDFへの書き込みが注釈機能のようなものの場合など、取引内容が変更される恐れのないものであれば保存することも可能であるとも考えられます。しかし、PDFが仮にタイムスタンプを付されたものである場合、書き込み前後でファイルのハッシュ値が異なるため、真実性の要件を満たさなくなります。つまり、授受を行ったファイルに対して変更が行われていることになるので、PDFへの書き込みを行う前のファイルを電子取引に関する電磁的記録として保存する必要があります。なお、PDFへの書き込み行ったものは社内の確認用ファイルとして保存することになります

金額で検索するための保存対応は?

改正電帳法への対応において、「金額」で検索できる保存が可視性の要件としてありますが、その際以下のような書類の保存方法に懸念が想定されます。

  • 金額が未確定な取引にかかる書類
  • 分割納品の場合の納品書
  • ファイル名に金額を入れて保存する書類

これらについて、例を用いて順に回答していきます。

Q.成果報酬や従量課金の契約の場合、金額が定まっていません。電子データの契約書を保存する際、「金額」で検索できる保存要件を満たすには、どのように記載をすればよいですか?


契約書上において契約金額が計算できない場合は、「取引金額なし(空欄)」もしくは0円として登録することになります。また、検索においても「取引金額なし(空欄)」としても検索できるようにする必要があります。

参考:2021年11月 国税庁「お問合せの多いご質問」Ⅲ【電子取引関係】電取追5

Q. 納品書の電子データについて、一括納品でなく分割納品となる場合、電子データの「金額」で検索できる保存要件を満たすには、一括の金額と分割の金額、どちらを記載すればよいですか?


電磁的記録上の納品書に記載されている金額で検索できるようにする必要があります。一括で記載されているのであれば、一括の金額を登録し、納品分の金額が記載されているのであればその納品分の金額で記録することになります。

Q. 電子データを保存する際、「金額」で検索できる保存要件を満たすために、ファイル名に金額を入れて運用しようと考えています。しかし、これだと1万円~2万円といった範囲検索ができないですが、この運用方法で問題ありませんか?


税務調査の際に電磁的記録の提示又は提出の要求に応じる場合は、範囲検索への対応は不要となるため問題ありません。ただし、提示又は提出の要求に応じない場合は、何らかの手段により範囲検索及び二項目以上での検索にも対応する必要があります。 

紙とデータのどちらで保存すべきか迷ったときは?

改正電帳法への対応において、紙とデータのどちらで保存すべきか悩む以下のようなケースがあると想定されます。

  • 紙の納品書に不備があり、電子で正しいものを受領した
  • 契約書の締結は紙で行い、覚書を電子で締結している

これらについて、例を用いて順に回答していきます。

Q.紙の納品書をもらっていたが、商品内容に誤りがあったため再度もらい直した際、電子データで受領しました。その場合、どちらの納品書を保存しておくべきですか?


紙と電子データに記載された取引情報が異なるものになるので、両方とも保存が必要になります。取引先が誤って同じ書類を2通送ってきた場合など、内容が同じものであればどちらかの保存で問題ありません。

参考:2021年11月 国税庁「お問合せの多いご質問」Ⅲ【電子取引関係】 電取追1

Q.紙で契約書を締結しましたが、覚書に関しては電子で締結しました。その場合、覚書を印刷して紙で保管しても良いですか?


電子で締結したものは覚書であっても電子取引に該当しますので、紙出力したものを原本として保存することはできず、電子データとして要件を満たして保存する必要があります。なお、紙の契約書と一緒に保存するために紙出力することは問題ありません。(紙出力を禁じている法律ではありません。)

まとめ

今回は、改正電帳法に関して実例をもとに質問にわかりやすく解説しました。ここではご紹介していないQ&Aに関してもご覧になりたい方は、以下から「改正電帳法Q&Aのお役立ち集をぜひダウンロードください。



次回のVol.02では、今回ご紹介し切れなかった電帳法の対象書類に関する保存方法について書いていきますので、ぜひご一読ください。