電帳法

改正電帳法への対応で困ったこと、専門家に聞いてみた。Vol.03

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本記事では、改正電帳法に関して税理士監修のもと、「確かにそれってどうなるの?」と思ってしまうような質問にわかりやすくお答えします。今回のVol.3では、改正電帳法にまつわる様々な質問にお答えしていきます。

全3シリーズであらゆるケースに応じた質問にお答えするので、改正電帳法の応用部分について理解を深めることができます。

電子書類に押印したいときは?

 今まで紙で授受して押印していたものが電子になると、どう対応したらよいのか不安になる方もいると思います。電子取引で生じる書類への押印に関して、例を用いて解説します。

Q. 請求書等に承認スタンプを押しているため、電子データの場合も承認スタンプを押す予定です。そうすると、PDFにスタンプが追加されるので原本に訂正を加えたという扱いになってしまいますか?


承認スタンプが注釈機能のようなものの場合、取引内容が変更されるおそれがないものとして保存することが可能であると考えられます。ただし、仮に当初データをタイムスタンプの付されたものとした場合、ファイルのハッシュ値が異なることになり、真実性の要件を満たさなくなります。つまり、授受を行ったファイルに対し変更が行われているということになりますので、承認スタンプを押す前のファイルを電子取引に関する電磁的記録として保存する必要があります。その場合、承認スタンプを押したものは社内の確認用ファイルとして保存することになります。

Q. 電子取引で請求書のやり取りをする場合、請求書への押印はどのようにすればよいですか?


請求書への押印は、国税関係の法律において特に定めはありません。したがって、以下3つの対応方法が考えられます。

 ①押印したものをスキャナで読み取り、その電磁的記録を相手方へ送信する

 ②押印をせずに送信する

 ③請求書上に押印画像を付して送信する

罰則はあるの?

法改正が行われることで気になるのは、それを守らなかったときにどのような不利益があるかだと思います。改正電帳法の罰則について解説します。

Q. 「電子取引情報」を電子データで保管していなかった場合の罰則は、どのようなものが考えられますか?


電子取引を行い、その電子取引の電磁的記録(電子データ)を保存していなかった場合は、法人税法等で定められている帳簿書類の保存を適正に行っていないことになるので、青色申告の承認を取り消されることが有り得ます。また、適正に電子データを保存していないことが、偽りその他不正の行為に該当することとされたときは、法人の場合は10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金(法人税法第159条)となることがあります。

対象範囲は?

改正電帳法への対応において、扱っている書類が対象範囲のものか分からなくなるケースとして、以下のようなものが想定されます。

  • 売上伝票などの伝票類
  • 対応するのは改正後に受け取ったものか、もしくは改正後に取引が発生したものか
  • 受注しなかった見積書
  • 電子保存をしてはいけない書類はあるのか 
  • 海外との取引で生じた書類

これらについて、例を用いて順に回答していきます。

Q.売上伝票などの伝票類も電帳法の対象になりますか?


作成用途によって異なります。伝票が国税関係帳簿の記載内容を補充する目的で作成され、その伝票が帳簿の一部を構成する場合は「国税関係帳簿」となり、電帳法の対象となります。一方で、売上伝票などが、企業内での決裁や整理などを目的として作成されている場合は、国税関係書類に該当しないため、電帳法の対象にはなりません。

Q. 改正電帳法に対応すべき書類は、2024年1月1日以降に受け取ったものが対象でしょうか、それとも発生した取引が対象ですか?


改正電帳法の適用は2024年1月まで宥恕措置期間として猶予されているものの、正式には2022年1月から適用開始されています。スキャナ保存は2022年1月1日以降に保存する書類が対象となり、電子取引については2022年1月1日以降に行う電子取引が対象となります。

Q. 受領した見積書は契約に至ったものだけに保存の義務がありますか?


法人税法や電帳法上において「取引に関して」との記載がありますので、原則として取引が行われることを想定して作成又は受領した見積書は、契約の有無に関係なく保存が必要です。例えば、複数社に相見積もりを行い、その中の1社と取引を行った場合は、「取引に関して」受領した見積書になりますので、保存が必要です(契約に至らなかった見積書の保存がなくても税務調査の際に厳しく言われることは少ないと考えられます)。例外を設けて保存対象外とすることも考えられますが、取引に至っていないことを証明することが困難なので、全ての見積書を保存することを推奨します。

Q. 電子保存が認められない国税関係書類はありますか?


電帳法全体としては電子保存が認められない書類はありませんが、電子保存の方法ごとに保存できない書類は存在します。例えば、スキャナ保存の場合は、システムで一貫して作成した国税関係書類についてはスキャナ保存で対応することはできません。
 

Q. 海外との電子取引に関しても、電帳法の対応が必要ですか?


国内と国外で電帳法の対象に差はありません。海外の企業から受領する書類であっても、海外の企業に対しての発注であっても、電子取引を行っているのであれば電帳法の対象になります

FAXで授受する書類はどうなるの?

FAXで取引した書類に関して、原本とみなされるか否か、紙取引に該当するか否かが分からず、電帳法にどのように対応すべきか不安になる方もいると思います。これらについて、例を用いて回答していきます。

Q.FAXで受信出力された書類は書類原本とみなし、電子取引情報ではないという理解で間違いないですか?


「ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用」した場合は電子取引との記載がありますので、FAXからPDF等でデータ出力している場合は電子データ紙で出力されるFAXであれば紙の保管という解釈で良いと考えられます。そのFAXがPCとの接続機能等を有しておらず書面でのみ出力できるものの場合は、電子取引には該当しないため、FAXから出力された書面を保存することになります。

Q. FAXで送信したものは紙取引に該当しますか?


送信側も紙を取り込んで送信している場合は、紙取引になります。一方で、複合機を介してPC等から直接PDFを送っている場合などは、電子取引という整理で良いと考えられます。 

USBメモリで受け取った書類は?

データ量が膨大なため、USBメモリで書類を受け取ることもあるかと思います。そういったケースでの電帳法への対応について解説します。

Q. 見積書とパンフレットを同時に受領する際、データ量が多いことからUSBメモリで受領しましたが、どのように保存すればよいですか?


保存媒体については電帳法上特に規定はありませんので、検索要件等を満たすことができるのであれば、USBメモリのまま保存しても問題ありません。パンフレットについては、見積書を補完するものでなければ電帳法上の保存対象ではありません。

まとめ

今回は、改正電帳法に関して実例をもとに様々な質問にわかりやすく解説しました。ここではご紹介していないQ&Aに関してもご覧になりたい方は、以下から「改正電帳法Q&Aのお役立ち集をぜひダウンロードください。


全3シリーズで解説した改正電帳法に関するQ&Aですが、読んでいただいた方は改正電帳法の応用部分まで、しっかりと理解を深められたと思います。2024年1月の宥恕期間を経た義務化に備えて、いまから準備を進めましょう。