電帳法

改正電帳法はいつから?猶予期間(宥恕措置)が終わるまでに必要な対応について解説

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改正電帳法のポイントを整理

改正電帳法は2022年1月にすでに施行されている法律です。現在は本格実施に向けた2024年1月までの宥恕措置(ゆうじょそち)による対策準備期間。すべての事業者が対策するべき事項もあるので、まずは改正のポイントを含めた内容を確認していきます。

業務効率向上を目的とした「改正電子帳簿保存法」

改正電子帳簿保存法(以下改正電帳法)は、経理業務の電子化とペーパーレス化を目的として整備された法律です。もともとは紙での保存が義務づけられていた国税関係書類について、一部電子化保存を義務づけ、ルール化したものとなっています。

本法律が立法される以前より、国税関係書類や書類保管に掛かる業務負担は長く課題とされてきており、この課題への打ち手として1998年7月に電子帳簿保存法は初めて施行されました。国税関係書類のデータ保存を許可し、保存に関わる業務コストや保管における費用負荷などの軽減を目的として施行されたというのが、これまでの経緯です。

そして業務のデジタル化促進など更なる業務効率の向上を目的として、2022年1月に改正電帳法が施行されることとなりました。企業としては2024年1月までには、本法律に対応する本格的なアクションが求められている状況となっています。

改正における最大のポイント

電子帳簿保存法が改正により新たに施行されたのが「スキャナ保存要件の緩和」電子取引制度の義務化」の2項目です。このなかで「電子取引制度の義務化」はすべての事業者が対象となるので、確認と必要に応じた対応が本格施行となる2024年1月までに必要となります。

◎電子取引制度の義務化

電帳法が改正され、2022年1月から義務化となったのが「電子取引制度」です。「電子取引制度」とは電帳法のなかの「電子取引に関する保存や管理のルール」を定めた内容で、電子データで受け取った、または交付したものについて、紙での保存を禁止とするというものです。メールなどで受け取った領収書や見積書などは、今後は必ず規定に沿った形式でデータでの保存をすることが義務づけられます。つまり、ほぼすべての事業者が対策を実施する必要があるのです。

◎電帳法のなかの「電子取引」に該当するもの

補足として、電子取引に該当するものの定義を整理しておきます。おおまかな判断基準としては「紙で授受する以外のものすべて」と覚えておけばわかりやすいかもしれません。電子取引に当たると考えられる取引には、以下のようなものがあります。

①電子メールにより受け取った請求書や契約書など(ex.PDF)

②WEB上でのダウンロードやスクリーンショットにより取得したデータ

③クラウドサービスなどにより受領した請求書や領収書

④カードの利用明細やスマホアプリ決済データなどを活用した、クラウドサービスの利用

⑤EDIシステムによる特定の取引

⑥ペーパーレスFAX機能をもつ複合機の利用

⑦DVD等の記録媒体にて取得した請求書など

電帳法の猶予期間の意義

現在は改正電帳法の猶予期間に当たりますが、猶予期間にはどのような意義があるのでしょうか?これまでの経緯や意義を解説していきます。

仕組みを整備するための猶予期間

2022年1月から義務化となった改正電帳法ですが、システム整備が間に合わない事業者の声が増えたことから、仕組みを整備するために猶予期間を設ける措置がとられました。しかし、現在もやむを得ない理由を除いては、すでに義務化されている状態です。猶予期間を過ぎれば、取り締まりやペナルティの整備などが実施される可能性もあるため、できるだけ早めの対策が必要です。

インボイス制度を視野に入れた猶予期間でもある

改正電帳法の猶予期間は、2023年10月に施行されるインボイス制度の期間をまたぐため、双方を視野に入れた対策をするのにも良い機会です。インボイス制度が施行されれば、その規定にしたがって請求書の区分管理も必要になるなど、これまでの業務フローでは施行後にかなりの業務負担を強いられるタイミングを迎えます。

そのため、インボイスの施行も含めて対策を考慮すると、幅広い形態の書類管理や保存ができる、どちらの法律にも対応した仕組み作りやシステム導入が理想です。事務処理に関わる人物が限定されていれば、属人的な対策でも対応できる場合もありますが、複数の人物が事務処理に関わる場合はシステムやサービスの導入が良策です。今後の予定を見据えたうえで、本格施行から逆算しながら早めのアクションを進めることをおすすめします。

猶予期間にすべきこと

準備期間にやっておくべきことを解説します。まずは対策が必要となる「電子取引制度」で定められた4つの保存要件から確認していきます。

対策が必要な4つの保存要件

電子取引制度では下記の要件に従った、保存・管理が求められています。

①システム概要を記した書類の備えつけ

②見読可能装置の備えつけ

③検索機能
 ・取引年月日・日付、取引金額及び取引先を検索の条件とできること
 ・日付・金額に係る記録項目について範囲指定と条件設定ができること
 ・二項目以上の任意の記録項目を組み合わせて条件設定できること

④下記のいずれかの措置 
※税務職員による質問検査権に基づくデータのダウンロードの求めに応じることができる場合は不要
 ・タイムスタンプが付与されたデータの受領
 ・速やかにタイムスタンプを付与
 ・データの訂正削除を行った場合に記録が残るシステムであること、
  または訂正削除ができないシステムを利用すること
 ・訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け

電子取引制度対策のためにすべきこと

改正電帳法で対応が求められるのは、電子データの保存と管理方法の対策です。先程ご紹介した保存要件を踏まえ、猶予期間に行うべき対策を解説していきます。

・どのような対策が必要か確認

電子取引データの形態が、PDFかEDIか紙かによって下記のように保存要件が異なります。そのため、社内のデータがどの保存要件に該当するかを確認し、保存方法を考えておく必要があります。また、そのデータがどのくらいあるのかを踏まえ、保存方法と保存場所を決定しておくことも大切です。

それぞれの形態ごとの保存要件は下記のようになります。

●電子領収書・スクリーンショット・FAX・DVDなど
◎タイムスタンプが付与されたデータの受領
◎速やかにタイムスタンプを付与
◎訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け

●クラウド・キャッシュレス決済・EDIシステム
◎データの訂正削除を行った場合に記録が残るシステムであること、
 または訂正削除ができないシステムを利用すること
(例外/クラウド上からダウンロードしたデータを保存する場合は、他の形態と同様の保存でOK)

・電子取引制度の対策方法を決める

改正電帳法に対応した保存・管理は、取引数がさほど多くなければ自社での周知・仕組み作りなどによる対策も可能です。しかしその場合は、個々の対応ミス(保存方法の誤りなど)や今後の法改正の度に、新たな対策や修正が必要になることを覚えておく必要があるでしょう。

一方で、電子取引制度に対応した保存・管理が可能な、業務DXサービスの導入による対策も有効です。導入したシステムが承認機能などを搭載したものであれば、社内での承認申請も紙で出力することなく、最終的な保存・管理までをデジタルデータにて完結できます。個別の対応で対策をするか、システム導入によって対策するかによって工数が大きく変わります。どちらの方法で対策を進めるかを早期に決め、方針に従って進めれば対策完了までがスムーズです。

・社内の仕組み作り、ルールの周知を行う

データ保存の仕組み作りや社員への周知も必要になります。属人的な対策で進める場合はマニュアル作成なども必要になりますので、業務内容や具体的なシチュエーションごとの対応の想定も必要です。またシステム導入で対策する場合も、同様に簡単なルール設定が必要になりますが、操作説明程度で完結する場合もあります。それぞれの対策方針にあわせたマニュアル作成や周知を行いましょう。

・インボイス制度への対応も視野に入れ早めに対策をはじめる

改正電帳法は2024年1月までの対策が必須ですが、猶予期間内にインボイス制度も施行されるため、あわせて対策が必要となります。2023年11月に施行されるインボイス制度の対策内容も理解のうえ、可能であればどちらにも対応した対策をしておきたいところ。そのために早くから動き出し始めることが、重要です。

これまでご紹介した通り、改正電帳法の対策は検討・決定・仕組み作り・周知・運用と一朝一夕には完了しないものです。システム導入で対策する場合は比較的早い対策も可能ですが、導入までの準備期間は必ず必要となってきます。今後の状況を踏まえても、早期に検討を始め、早期に対策を始めることが良策です。

まとめ

改正電帳法に伴う対策は、「いつまでに」というよりも「今すぐに」始めることが必要です。対策の方法としては、「現場の社員に対して保存・管理ルールを周知する属人的な方法」か、「改正電帳法に対応したシステムを導入するか」の二つに大別されます。今後の業務負荷も加味しながら対策の方針を決定しておくことで、準備を円滑に進めることができるでしょう。

弊社で提供している「intra-mart Procurement Cloud」も、改正電帳法に対応したデータの保存・管理が可能な業務支援システムです。契約書などの作成から保存管理が一括して行なえるほか、承認機能があることでデータ管理を簡単に行なうことができます。バックオフィスの業務DXを支援する機能はこのほかにも複数搭載されていますので、この機会にぜひ一度導入をご検討ください。




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