
電子契約ってどんなもの?仕組みやサービスの選び方と解説!

近年、国を上げたDXの推進によって、電子契約の普及が進んでいます。しかしながら、言葉としては知っていてもその実態がわからず導入にためらいを感じているケースも多いのではないでしょうか。この記事では、電子契約について、基本的な知識から選び方までわかりやすく解説します。
電子契約とは
電子契約とはデータで作成した契約書を相手方に送付し、電子署名と電子印鑑を埋め込んでもらうことで締結完了とする契約です。従来の紙の契約書では直筆による署名と印鑑の押印が必要ですが、クラウド上で完結できるメリットは大きいでしょう。紙の契約書は郵送で収入印紙や郵送料が必要なのに対し、電子契約は郵送にかかるコストが不要です。
社内の倉庫で契約書の原本を保管する場合は、紛失や改ざんのリスクに注意しなければなりません。さらに契約書の取り出しの手間と災害時には復元不可能な状態になるため、現物保管にはデメリットが多く存在します。しかし、電子契約を導入すると課題を一気に解決できるため、セキュリティ対策やコンプライアンスの強化におすすめです。
また、現時点では電子契約について明確な定義はありませんが、業務のデジタル化を進める企業ではすでに導入実績があります。日本政府はデジタル庁を創設し、本格的にペーパーレス化に向けて取り組みが進められています。紙で作成されていた契約書がすべて電子化できれば、手続きや管理の負担軽減とコスト削減に期待できます。
電子契約の歴史
近年の働き方改革の推進と業務のデジタル化が進められているなかで、電子契約の導入と検討する企業が増加しています。しかし、電子契約は最近始まったばかりではありません。電子契約に関する法律は20年以上前から存在します。
①電子帳簿保存法(1998年7月施行)
②電子署名法(2001年4月施行)
③IT書面一括法(2001年4月施行)
④e文書法(2005年4月施行)
- 電子帳簿保存法はWindows98の発売年に今後のペーパーレス社会に対応するために制定されました。会計ソフトで作成した帳簿や契約書をデータ保存することで管理にかかる負担軽減を目的としています。
- 電子署名法は電子データで契約する際に書面契約と同等の効力を与えるために電子署名法が制定されました。電子認証局と時刻認証局が発行する電子証明証を契約書に埋め込むことで法的効力を持たせています。
- IT書面一括法は一定の条件を満たした場合に、契約書などの書面の交付や提出を電子メールで行うことを認める法律です。従来では郵送での提出が求められていた書類を電子メールやFAXで送信ができるように認めています。最近では、電子ファイルで書類のアップロードが可能になったことで手続きの負担が軽減されています。
- e文書法では紙による保存が義務付けられていた書類を電子データとして保存を認めるために制定された法律です。電子化が認められている書類は契約書やカルテなど多岐に渡ります。紙の書類は傷ついたり、紛失したりするリスクがあるため、管理の手間や保管場所の確保が不要になるメリットがあります。
近年の新型コロナウイルスの流行による感染拡大でリモートワークが推進されていますが、書類への押印による出社が問題視されるようになりました。日本の企業には役職に就いている人物の実印を求める習慣があるため、「脱ハンコ」を目指すために電子契約サービスが注目されています。
電子契約の仕組み
電子契約の仕組みは、契約書の電子データを当事者同士でやりとりを行い、電子署名や電子印鑑を埋め込むことで締結完了とされています。電子契約による取引において真実性や非改ざん性を担保するには電子署名が有効です。
実際に電子署名法 第2条1項では以下のように定義されています。
この法律において電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一:当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二:当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
引用元:電子署名及び認証業務に関する法律
電子署名では「秘密鍵」とよばれる暗号化されたキーを相手方に送り、受け取り側は誰でも簡単に入手できる「公開鍵」でデータを読み取ります。第三者に読み取られるリスクがないので、データ上の安全性を確保できるわけです。
さらに第三者機関の認証局が本人確認を行うため、真実性を証明できています。また、本人による電子署名が行われた証拠として電子証明書とタイムスタンプが利用されているため、非改ざん性も担保しています。
電子契約サービスの選び方
電子契約に移行するメリットは印紙税が不要になるため、結果的にコスト削減につながります。さらに書類の郵送を行う担当者の負担が減るので、本来すべき業務に集中できます。電子契約サービスを利用するには契約が必要です。サービスを提供している会社によってプランや料金は異なります。
電子契約サービスを選ぶ際に確認すべきポイントは以下のとおりです。
①費用対効果で選ぶ
②法的効力の担保の有無で選ぶ
③セキュリティ機能で選ぶ
④当事者署名型・立会人署名型で選ぶ
➄電子帳簿保存法への対応の有無で選ぶ
- 費用対効果で選ぶ場合は、電子契約サービスの契約において費用対効果の確認が必要です。なかには無料プランを提供している会社も存在しますが、一定の制限を設けているため、自由度が低いケースがあります。基本的には月額費用が発生するサブスクリプションであるため、過去1年間で発生した印紙税や郵送料を算出してから検討すべきです。また、金銭的な面以外にも時間的なコストの削減に目を向けてみましょう。
- 法的効力の担保の有無で選ぶ際に「電子署名」「電子証明書」「タイムスタンプ」の有無を確認すべきです。特に電子署名とタイムスタンプは、契約において本人の真実性と非改ざん性を担保できる法的効力が強力です。電子証明書も本人による契約を証明できますが、利用料が高い傾向があります。電子署名があれば、十分に証明ができるため、必ずしも必須ではありません。
- セキュリティ機能を重視する場合は同業他社のサービスと比較すべきです。費用対効果が良くても安全性が低いサービスでは、情報漏洩や改ざんのリスクが高まります。サービスを提供する会社によってセキュリティ対策も異なりますが、必要最低限の安全性は確保すべきです。自社の存続に影響を与える可能性が高いため、セキュリティ対策も確認しましょう。
- 当事者署名型・立会人署名型で検討する場合は2つの違いを把握すべきです。当事者型署名は電子署名において契約を行う者同士の名義が認められます。一方で立会人型署名は当事者以外の第三者が署名を行います。電子契約サービスの提供会社が立会人として電子署名とタイムスタンプを付与する仕組みです。多くの電子契約サービスでは立会人型署名を採用しています。
- 電子帳簿保存法への対応の有無で検討すべき理由は法律違反になる可能性があるためです。2023年12月31日以降は電子帳簿保存法に基づき、電子帳簿保存法の要件を満たさない電子契約サービスは認められません。(参考:国税庁)取引先が電子契約に同意しない場合は書面契約で締結する可能性があるため、スキャナーで読み取れる機能があれば便利です。
まとめ
本記事では電子契約の仕組みとサービスの選び方について解説しました。電子契約を行う企業が増えている一方で、従来の書面契約を行う企業も多いため、両方のパターンに対処できる機能で選ぶのがおすすめです。電子契約を利用すると、コストの削減と業務の効率化が期待できます。しかし、セキュリティ面や法律違反には注意すべきです。