印紙税を納めないとどうなるの?税務調査の実態から納付漏れのリスクについて解説

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紙の契約書を締結する際には、収入印紙の貼付によって印紙税を納める必要があります。これを怠った納付漏れが税務調査によって発覚すると、過怠税としてより多くの税金を命じられたり、信用が失墜する可能性もあります。この記事では、印紙税の調査の実態や、納付漏れのリスクについて解説します。 


税務調査とは 


税務調査とは、国税庁もしくは税務署の調査官が納税者の確定申告の内容と帳簿や計上漏れの確認を行う調査です。国税庁はデータベースに蓄積された税務申告の内容から不明点がある場合に税務調査を行います。たとえば、昨年度と比較して経費が多すぎたり、売上が急に伸びたりすると調査対象になるケースがあります。税務調査が行われる時期は企業の人事異動が落ち着く7月頃から年末に多い傾向です。 

 

申告内容に虚偽や脱税が発覚した場合は、罰則として税金の加算や逮捕される可能性があります。また、税務調査が行われる日数は1~2日程度です。企業の事業規模によって変わりますが、ほとんどの場合は数日で終わります。税務調査では過去5~7年間にさかのぼって実施されるため、いつでも申告内容の証拠となる帳簿や資料を提出できるように整理整頓が必要不可欠です。 

 

さらに税務調査は「任意調査」と「強制調査」の2つにわけられます。いずれも帳簿や領収書の提示が求められます。もし税務調査を拒否すると罰則が下されるため、基本的に納税者は対応しなければなりません。また、調査官の質問に対して正しく回答できるように日頃から確定申告に関する書類の準備が必要です。強制調査では脱税の疑いがある納税者に対して、裁判所の令状により強制的に税務調査を行われます。 


印紙税の税務調査の方法 


契約書や領収書などの課税文書に貼付する収入印紙の申告内容に不明点がある場合は、税務調査が行われる可能性があります。調査では、課税文書に貼付されている収入印紙を直接確認します。もし貼付漏れが判明したとしても、多くの場合は指摘されるだけで済みます。 

 

基本的な税務調査は以下の手順で行われます。 

①調査日の調整 
実地調査 
修正申告
 

  1. 一般的には担当の調査官より、税務調査の連絡があります。調査実施日の2週間前から打診があるため、企業側の都合と調整して決定します。印紙税の調査において抜き打ちで行われる可能性は低いため、調査日までに企業側は説明に必要な資料や契約書の準備が必要です。 
  2. 実地調査は、調査官が直接企業に訪問する税務調査の1つです。調査では、企業の決算書、総勘定元帳、社内規定の閲覧から始まり、契約書や領収書などの課税文書を調査します。企業側の担当者に質疑応答を行い、調査の結果報告まで待機します。調査官の作業スペースの確保や書類をファイリングして閲覧ができる状況を提供すると、1~2日程度で終了するケースがほとんどです。 
  3. 税務調査で申告内容に誤りや申告漏れが判明した場合は、正しい申告内容に修正するのがおすすめです。また、調査結果に納得できなかった場合は、税務署もしくは国税不服審判所に更正もできます。しかし、ほとんどの企業は修正申告に対応し、税務署に提出して手続きを終わらせます。 


印紙税の税務調査は「同時指導」「単独調査」の2つにわけられます。「同時指導」では、所得税や法人税の調査と同時に、不納付文書の存在が発覚した場合に行政指導を行います。一方で「単独調査」では、印紙税を限定的に調査します。基本的に国税庁は資本金が50億円以上の企業を調査対象としていますが、国税庁の判断によっては50億円未満の企業も対象になります。協同組合などの法人と個人事業主は原則、税務署の調査対象です。 

 

印紙税の単独調査では、最初に作業手順の確認が行われます。具体的には、契約書や領収書の作成や保管までの工程や収入印紙の貼付方法を説明しなければなりません。特に収入印紙の購入と使用履歴の保管方法に重点が置かれます。収入印紙の管理簿で保管するのが望ましいですが、管理簿がない企業の場合は総勘定元帳で収入印紙の購入回数や金額を確認します。 


納付漏れが発覚した際のリスク 


もし税務調査で収入印紙の納付漏れが発覚した場合は、罰金の支払いとレピュテーションリスクによる不利益を被る可能性があります。意図していない納付漏れであっても、脱税事件のように報道されるリスクがあります。レピュテーションリスクが注目されている背景には、インターネットの普及による情報の高度化が挙げられます。近年では、SNSを利用する企業が増加する一方で、SNSのユーザーによる誹謗中傷のリスクも抱えています。企業に対する信用やブランドのイメージが低下するため、風評被害を招いてしまうことに注意が必要です。 

 

また、収入印紙は経費に計上できますが、税務調査で貼付忘れを指摘された場合は罰金で過怠税が発生します。過怠税は、自己申告で1.1倍相当、自己申告以外で3倍相当が課税されます。自己申告を行う場合は、課税文書の作成者が税務署長に「印紙税不納付事実申出書」の提出が必要です。 

 

「印紙税不納付事実申出書」には以下の内容が記載されています。 

 

この申出書は、課税文書の作成者が自ら作成した課税文書(印紙貼付の方法により印紙 

税を納付するものに限ります。)について、印紙税を納付していない旨の申出を行う場合に 

提出するものです。 

 

記載要領 

 「申出者(作成者)」欄は、不納付となった課税文書を作成した者の住所(作成者が 

法人等の場合には、本店又は主たる事務所の所在地)、氏名又は名称(作成者が法人等 

の場合には、名称のほか、代表者の役職名(代表者であることを示す役職名)及び氏 

名)及び個人番号又は法人番号を記載します。 

 「課税文書の作成場所」欄は、不納付となった課税文書を作成した場所(印紙税の 

納税地)の所在地及び名称を記載します。 

 「課税文書」欄の「号別」及び「課税物件名」欄は、不納付に係る課税文書につい 

て、印紙税法別表第一(課税物件表)の「番号」及び「物件名」欄に記載された番号 

及び物件名を記載し、「名称」欄は、その課税文書の名称(表題)を記載します。 

 不納付に係る課税文書の号別、課税物件名及び名称が同一であり、かつ、作成年月 

(日)が同一であるときは、これらを同一の所持者又は所持者が明らかでないものご 

とにまとめて一行に記載しても差し支えありません。 

 「不納付となった理由」欄は、不納付となった理由(複数ある場合は、主な理由) 

の□にレ点を記載します。 

 この用紙に書き切れない場合には、「印紙税不納付事実申出書(次葉)」を使用しま 

す。 

 申請・届出書の控えを保管する場合においては、その控えには個人番号を記載しな 

いなど、個人番号の取扱いには十分ご注意ください。 

引用:「印紙税不納付事実申出書」の記載要領等 

 

また、貼付された収入印紙に消印が押印されていない場合は、本来支払うべき金額に応じて過怠税が徴収されます。ただし、過怠税は経費として認められないため、計上しないように注意しなければなりません。 

 

収入印紙の貼付忘れは決して珍しいことではありません。しかし、印紙税の納付漏れは企業に不利益をもたらすリスクがあります。契約書や領収書などの課税文書に収入印紙が貼られていることを確認しなければなりません。ミスが多い場合は、業務改善を検討すべきです。ただし、電子契約で作成された契約書や領収書は課税文書の対象外です。さらに収入印紙の貼付がないため、経費削減につながります。もっといえば、罰金のリスクや納付漏れによるレピュテーションリスクを抑制できます。


まとめ 


本記事では、印紙税の税務調査から納付漏れが発覚したときのリスクについて解説しました。収入印紙が必要な課税文書の取り扱いを厳重にチェックするのは社内のリソースを圧迫する可能性があります。課税文書の対象外として認められている電子データによる契約書や領収書には収入印紙や郵送料が不要です。さらに、納付漏れのリスクを未然防止できるため、レピュテーションリスクを抱えずに済みます。 


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