
電子契約には収入印紙は必要ないって本当?法律を元に解説!
昨今のDX推進の潮流の中で、契約を電子上で完結させるケースが年々増加しています。電子契約はオンライン上で締結可能であったり、電子データとして保存できるという点で従来とは異なりますが、収入印紙が不要というのも大きな違いです。この記事では、電子契約では収入印紙が不要な法的な理由について解説します。
電子契約とは?
電子契約とは、従来の紙による契約書を電子データで作成し、電子署名や電子印鑑を埋め込むことで締結完了とする契約です。電子署名には書面契約の署名と同等の法的効力を持つため、本人の真実性を証明できます。さらに第三者機関による審査のもとで発行される電子証明書は証拠として担保できる手段の1つです。
現時点では、電子契約に関する明確な定義がないため、実務を先行する形で導入が進められています。書面契約では、紙の契約書を使用するので、社内の保管場所に困るケースも少なくはありません。大量の契約書を現物保管するのと同時に、紛失したり、改ざんされたりするリスクも抱えています。必要なときに参照したい契約書を探す手間がかかるため、管理担当者の負担も大きくなります。
しかし、電子契約はオンラインで契約管理を行うので、保管場所に困ることはありません。書面契約では郵送料と収入印紙が必要ですが、電子契約は印紙税法で定められている課税文書の対象外であるため、コスト削減が期待できます。また、電子契約の文書には作成した日時を証明するタイムスタンプを付けられるため、作成後の非改ざん性を担保しています。
収入印紙とは?
収入印紙とは、経済的な取引において必要な契約書などの課税文書を郵送する際に、印紙税や登録免許税などの税金を徴収するために発行される証票です。印紙税法では、課税が義務付けられている契約書などの文書を「課税文書」と定義しています。
収入印紙は郵便局やコンビニでも簡単に購入ができます。使い方は、郵便切手と同じように必要な金額分の収入印紙を書類の左上に貼り付けるのみです。おもに印紙税を納めるときに使用するため、書面契約の場合は納税義務があります。たとえば、課税文書の1つである請負契約書に課せられる税額は、契約金額に応じて異なります。仮に契約金額が1万円未満であれば非課税ですが、1万円以上の場合は課税対象です。
請負契約書に課される印紙税 | |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円を超えて100万円以下 | 200円 |
100万円を超えて200万円以下 | 400円 |
200万円を超えて300万円以下 | 1,000円 |
300万円を超えて500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超えて1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円を超えて5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円を超えて1億円以下 | 6万円 |
1億円を超えて5億円以下 | 10万円 |
5億円を超えて10億円以下 | 20万円 |
10億円を超えて50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載なし | 200円 |
参考:国税庁
国税庁で定めている課税文書の要件は以下の3点です。
- 印紙税法で定められている20種類の文書に課税事項が記載されていること
- 契約を行う当事者間において課税事項を証明する目的で作成されていること
- 印紙税法で定められている非課税文書ではないこと
参考:国税庁
課税文書を作成した本人が課税文書でないことを主張したとしても、契約締結のために作成したことが明らかであれば課税対象になります。もし自社で作成した契約書に収入印紙を貼付していなかったとしても、契約書の作成に法的義務がないため、契約が成立します。口約束であっても契約はできるため、当事者間との契約内容に合意した証拠を残す手段として活用できます。つまり、契約の合意と印紙税の納付に無関係です。
しかし、収入印紙の貼付を忘れると税務署から「過怠税」が課せられます。税務署から指摘を受けた場合は納税額の2倍、自己申告した場合は納税額の10%を負担しなければなりません。基本的に印紙税は書類を作成した側が支払うため、書類の受け取り側は収入印紙が貼付されていない場合であっても特に経理上の問題はありません。
ただし、印紙税の納付は収入印紙を貼り付けた書類を税務署に提出した時点で認められるため、購入のみでは納税したことになりません。一般的に契約書を作成する際は、収入印紙を貼付してから割印を押すと納税したことが証明される仕組みです。
電子契約に収入印紙が不要な理由
電子契約に収入印紙が不要である理由は、用紙に内容を記載した文書を「課税文書」と定義しているためです。電子契約の場合は、データで文書を作成するため、課税文書に該当しないと考えられています。課税文書における「作成時」とは、相手方に交付する行為を指します。
印紙税法基本通達第44条には課税文書の作成について以下のように定義されています。
第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
2 課税文書の「作成の時」とは、次の区分に応じ、それぞれ次に掲げるところによる。(平13課消3-12、平18課消3-36改正)
(1) 相手方に交付する目的で作成される課税文書 当該交付の時
(2) 契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書 当該証明の時
(3) 一定事項の付け込み証明をすることを目的として作成される課税文書 当該最初の付け込みの時
(4) 認証を受けることにより効力が生ずることとなる課税文書 当該認証の時
(5) 第5号文書のうち新設分割計画書 本店に備え置く時
引用:国税庁
現時点の法律では、電子契約において収入印紙が不要であるとは明記されていません。しかし、2005年の国会答弁において当時の首相は以下のように回答しています。
「事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。
しかし、印紙税は、経済取引に伴い作成される文書の背後には経済的利益があると推定されること及び文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化することに着目して広範な文書に軽度の負担を求める文書課税であるところ、電磁的記録については、一般にその改ざん及びその改ざんの痕跡の消去が文書に比べ容易なことが多いという特性を有しており、現時点においては、電磁的記録が一律に文書と同等程度に法律関係の安定化に寄与し得る状況にあるとは考えていない。
電子商取引の進展等によるペーパーレス化と印紙税の問題については、印紙税の基本にかかわる問題であることから、今後ともペーパーレス化の普及状況やその技術の進展状況等を注視するとともに、課税の適正化及び公平化を図る観点等から何らかの対応が必要かどうか、文書課税たる印紙税の性格を踏まえつつ、必要に応じて検討してまいりたい」
また、電子契約書にて締結した文書は印刷しても課税文書の作成には当てはまりません。契約書のコピーとして取り扱われます。ただし、印刷した契約書で取引を行う場合は印紙税が発生するため、収入印紙の貼付を忘れないように注意が必要です。
まとめ
本記事では、電子契約における収入印紙について解説しました。収入印紙は印紙税の支払いに必要な証票であるため、課税文書に該当する書類に貼付しなければなりません。また、書面契約では用紙を使用した契約書で締結するため、印紙税法にもとづき課税文書と判断されます。もし収入印紙の貼付を忘れると、税務署に過怠税を追加で支払わなければなりません。
ただし、契約金額が1万円未満の場合は非課税となるため、状況に応じて収入印紙を貼付しましょう。一方で電子契約では、電子データで作成した文書は課税文書に該当しないと考えられています。まだ明確な定義はありませんが、印紙税法では用紙で作成した文書のみ課税することを明記しているため、電子契約であれば収入印紙の貼付や印紙税の納付は不要です。
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