
インボイス制度と電帳法の両方に対応するには?

インボイス制度とは
インボイス制度とは何か?
『インボイス制度 電帳法』は、それぞれ段階的に改正が進められてきました。まず、この2つの制度の内最初に改正されたのが電帳法(電子帳簿保存法)です。2021年3月26日に『所得税法等の一部を改正する法案』の一部に盛り込まれました。
この改正で大きく変化したのは、次の5項目です。
- 電帳法承認制度の廃止
- 優良電子帳簿制度の創設
- 国税関係書類のスキャナ保存の要件緩和
- 電子取引データの厳格な保存
- 罰則規定
請求書や領収書という紙に頼る方法を大きく変えました。
優良帳簿システムを導入する事業者に対して『過小申告加算税が減免(5%)』になること、そしてコロナ禍でリモートワークが導入されたこともあり、切り替えを試みたものの、新たな課題が見つかった、という方もいるのではないでしょうか。
一方で、インボイス制度は、2023年10月1日から施行される新しい仕入税額控除方式です。
このインボイス制度では、請求書に税率ごとの税額や登録番号を記載することが義務付けられます。
売り手側が、正確に消費税額を買い手側に伝えることが出来る制度です。
インボイス制度に対応するように発行する請求書を適格請求書といい、これを保管することを『適格請求書等保存方式』と呼びます。
導入の目的
『インボイス制度 電帳法』導入の目的は、大きく分けて4つあります。
- 消費税額の把握
- 消費税に関する不正やミスの防止
- 益税をなくす
- 複数税率への対応
・ 消費税額の把握
軽減税率により経理処理が複雑になったため、インボイス制度の下で導入される『適格請求書』を発行することにより、正確な消費税額を把握する。
・不正やミスの防止
請求書に消費税率・消費税額両方の記載をすることにより、仕入控除の不正やミスを防止します。
税務署に納税する際には、税率毎に仕入税額控除を計算します。
・益税を無くす
益税は、『事業者免税点制度』及び『簡易課税制度』により発生します。
『事業者免税利点制度』とは、消費税を納める義務の無い免税事業者が、買い手側から預かった消費税を利益にする考え方です。
『簡易課税制度』とは、課税事業者が一定の要件を満たすと適用出来る制度です。
通常『受け取る消費税-支払う消費税』という計算をして納税する金額を算出しますが、要件を満たすと『受け取る消費税-(受け取る消費税×仕入率)』という制度を利用するため、その差額を利益にすることが出来ます。
インボイス制度での納税形式の変更により、このような利益を得ることが出来なくなります。
・複数税率への対応
通常非課税・不課税・課税に加えて、軽減税率が存在します。
一律では無い以上、分けて計算する必要があります。
税率毎に分けて記載することにより、納税時の計算がしやすくなります。
インボイス制度で変わること
- 請求書の記載方法
- 課税事業者が仕入税額控除を受けられなくなる
- 免税事業者が課税事業者への転換を求められる
- 会計処理の見直し
・請求書の記載方法
複雑な税率に対応しながら、税額の記録を正確に保存するために、税率ごとに分けて消費税を記載します。
・課税事業者が仕入控除を受けられなくなる
インボイスを発行するために税務署に登録し、『発行事業者の番号』を取得しなければなりません。
仕入先が売上1,000万円以上の個人事業主・フリーランスの場合、免税事業者に支払った消費税控除を受けることが出来なくなります。
そのため、免税事業者にインボイス発行事業者として登録して貰う必要があるため、取引がしにくくなります。
・免税事業者が課税事業者への転換を求められる
上記②に記載しました消費税控除に関する理由により、免税事業者が課税事業者へ転換するように求めることが出来るようになります。
・会計処理の見直し
エクセルシートでの管理や、パッケージ型の会計ソフトでは、インボイス制度に対応できない可能性があるため、クラウド型の会計ソフト等に会計処理を変える必要があります。
改正電帳法とは
電帳法の重要性
『インボイス制度 電帳法』インボイス制度が始まる前に、まず最初の段階として電帳法の改正がありました。
電帳法で大きく変わったことは、紙で受領した請求書・契約書・見積書を画像データで保存することが認められた点です。
これまで証憑類は、7年間紙で保管するという決まりがありました。
7年間保管というと、大企業は倉庫があると思いますが、中小企業は保管場所に非常に困るため、倉庫を借りる契約を結ぶこともありました。
書類を保管するために倉庫を借りる費用までかかっている現状があったのです。
それが、ペーパーレス化推進により、作業やコスト面から多くの削減が可能になりました。
電帳法の対応は4つの区分けからなっています。
- 帳簿
- 書類
- スキャナ保存
- 電子取引
電子取引データ保存 義務化時期
電帳法の改正により、会計を扱う者の業務の効率化が図られました。
7年間紙で保管していたものを、スキャナやCD・会計ソフト等に電子データで保管することが出来るようになりました。
書類の保管期間に関しては、電子であったとしても7年になります。
設備投資や業績不振により、企業の利益がマイナスになり、欠損金の繰越控除を受ける場合は、欠損金が出た事業年度以降10年の保管が義務付けられています。
電子化した後の書類の保管期間は1年になります。
元データに関しましては、電子データ保存の申請日により、破棄出来る期間が異なりますので、相談をしている会計士や税理士・税務署に相談してから、破棄する必要があります。
電帳法 メリット
- コスト削減
- 業務の効率化
- リスク回避
・コスト削減
アナログ書類を作成するためのトナー代・書類保管用のファイル代・倉庫代・人件費などを削減することが出来ます。
・業務の効率化
手作業で行ってきた書類のファイリングや書類整理を削減することが出来ます。
・リスク回避
紙の保管に伴う、自然災害によりデータが失われるリスクや、劣化や破損に伴う文字の読みにくさなどの問題を回避することが出来ます。
電帳法 デメリット
- システム導入経費
- 不完全なリモート経理
・システム導入経費
レシートや請求書をスマートフォン等を使用して取り込む際のシステム導入経費、システムの入れ替え、SEの人件費・入れ替えに伴う残業代など、システムの導入には経費がかかります。
事前に見積もりを取って、電子化出来るものと出来ないものに分け、随時導入していく事が必要です。
・不完全なリモート経理
取引先が紙の請求書や領収書を使用している場合、郵送で送られるのは会社の住所になります。
そのため、完全にリモートワーク・ペーパーレスにする事が非常に困難です。
・ペーパーレスに伴う問題
システム障害やセキュリティ漏洩問題が起こった時、対処をすることが難しくなります。
IT企業でない限り、自社でシステム開発や運用をしないことをお勧めします。
ITに詳しい社員を専門家に育てるには費用も時間もかかるので、他社に任せることが正しい選択と言えるでしょう。
どちらにも対応するには
今やるべきこと
- インボイス制度・電帳法についての理解
- 電子帳票のできる資料の洗い出し
- システム選定
・インボイス制度・電帳法についての理解
仕事を進めるには現状把握からという事で、インボイス制度・電帳法への対応を正しく行う為にはそれらへの理解が必要です。
国税庁のホームページでは具体的にどの業務に対してどの様なアクションを、どんなスケジュール感で取り組むべきか説明がなされていない為、非常に悩み、様々なセミナーに出席してこられたのではないでしょうか?
納税業務から逆算して、効率良く進めていく為に、まずは制度を理解しましょう。
・電子帳票に出来る資料の洗い出し
電子帳票に出来る資料は、請求書・領収書・仕訳帳票の全てです。
しかし、先方やお客様が電子データを望まない場合、どうしても紙媒体が残ります。
紙でなければ対応出来ない顧客や取引先をリスト化しましょう。
・システム選定
インボイス制度・電帳法に対応するには、システムの選定が必要です。
特にインボイス制度は、軽減税率を含めた複雑な仕入計算に対応していかなければならない為、慎重なシステム選びが必要です。
インボイス制度 電帳法 Q&A
《インボイス制度 Q&A》
Q:適格請求書の発行者登録は、どのような手続きがあるのでしょうか?
A:e-Taxを利用して簡単に登録をすることが出来ます。また、郵送での登録を希望する場合の送付先は、各国税局のインボイス登録センターです。
また、適格請求書発行事業者の情報は、『国税庁適格請求書発行事業者公表サイト』で公表されます。
Q:登録申請を出してから登録通知を受けるまでに、どのくらいの時間がかかりますか?
A:登録申請をされる方の数によって異なりますが、事前にご登録いただいたメールアドレスに、登録通知データが『送信結果・お知らせ』内の『通知書等一覧』に格納された時、メールが届いて確認をすることが出来ます。
《電帳法 Q&A》
Q:取引先からクラウドサービスを利用して請求書を受領した場合、電子取引に該当しますか?
A:電子取引に該当します。
Q:電子計算機を使用して請求書を作成し、クラウドサービスを利用して取引先に電磁的な請求書を発行していますが、税務署に対して申請書を提出する必要がありますか?
A:電子取引を開始する場合には、税務署に対する申請は必要ありません。
請求書を紙で出力し、電磁的記録等により保存を行う時は、書類の保存に代える日の3ヶ月前までに法第4条第2項に係る『国税関係書類の電磁的記録等による保存の承認申請』の提出が必要になります。
まとめ
これまで、『インボイス制度 電帳法』という新しい制度に対する理解と適用方法についてお話してきました。
コロナ禍を見据えて既にペーパーレス化を導入した企業も多くありますが、取引先がまだペーパーレスになっていない、お客様がシステムを扱えない等の理由により、課題が沢山ある状況です。
取引先やお客様と歩幅を合わせながら、計画的にシステム導入をして、『インボイス制度 電帳法』という新制度に対する対策を強化していきましょう。