
インボイス制度で、経理部門が被る影響は何?

インボイス制度で生じる経理業務への負担
現行の区分記載請求書等保存方式では、一定の事項が記載された請求書等であれば誰が発行したものでも消費税の仕入税額控除を受けることができたため、取引先が課税事業者か免税事業者かを気にする必要はありませんでした。しかし、インボイス制度開始後に消費税の仕入税額控除を受けるためには、適格請求書発行事業者が発行したインボイスの保存が要件となります。
経理の現場ではインボイスを交付するだけでなく、受領したインボイスがその要件を満たしているか確認しなければいけません。その他にもインボイス制度に対応するための新たな業務負担が生じます。自身が売り手か買い手かによってその負担の比重は異なり、買い手の場合の方がインボイス制度の影響を受けると考えられます。
【自社が売り手(インボイスを交付する)の場合】
- 税率を分けた請求書の作成
- 自社発行のインボイスに適格請求書発行事業者の登録番号を印字
【自社が買い手(インボイスを受領する)の場合】
- 国税庁作成の名簿をもとに、適格請求書発行事業者の管理、登録番号を確認
- 売り手の登録番号を取引先コードに連動
- 免税事業者もしくは登録番号のない課税事業者向けの経過措置中は、控除額の管理
- 要件を満たしていなかった場合の、インボイス再発行依頼フローの確立
- インボイス保存期限(7年間)の管理
- 掛買いの売り手に登録番号の届出依頼
経過措置への対応
免税事業者もしくは登録番号のない課税事業者からの仕入は仕入税額控除が適用されませんが、インボイス制度開始後の6年間は、仕入税額の相当額に対して一定割合の控除が可能な経過措置※が設けられます。該当期間中の取引の仕入税額控除について、帳簿への記載事項(「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入である旨の記載)が追加され、会計処理も煩雑になります。
※2023年10月1日~2026年9月30日:仕入税額相当額の80%
2026年10月1日~2029年9月30日:仕入税額相当額の50%
したがって、インボイス制度開始後は適格請求書発行事業者と、免税事業者もしくは登録番号のない課税事業者に分けて経理処理しなければいけません。以下は各経過措置期間において、例として11,000円の消耗品を現金で購入した会計の都度処理と決算処理の方法になります。
【パターン1:都度処理】
【パターン2:決算処理】
インボイス制度による納税計算方法の変更
インボイス制度開始後は、消費税の税額計算方法を積上げ計算と割戻し計算の2つから選択することになります。原則、売上税額は割戻し計算、仕入税額は積上げ計算となっており、仮に売上税額で積上げ計算を選択した場合は、仕入税額では積上げ計算しか選択できないなど、納税計算方法でも影響が生じます。