インボイス制度の登録手順とは?対象者と手順を解説

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2023年10月開始のインボイス制度。消費税の複数税率(軽減8%と10%)に対応した仕入税額控除を適用する場合に「適格請求書(インボイス)」が必要です。税務署に登録番号の申請が必須となります。この記事ではインボイス制度の登録に必要な手続き方法について解説します。

インボイス制度の登録が必要なのは?

今まで課税売上高が1,000万円以下の事業者(個人・法人の区別なく)の場合「免税事業者」に該当し、消費税の申告は不要でした。
しかしインボイス制度が開始されると「課税事業者」として申告が必要になるケースがあります。登録必須である課税売上高が1,000万円超の事業者も含め、インボイス制度への対応が必要な事業者の条件とは以下の3つです。

  • 課税売上高1,000万円超の事業者(従前より「課税事業者」として消費税を申告)
  • 課税売上高は1,000万円以下だが「課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者を選択している事業者
  • 最終消費者が「個人」ではなく「法人」の事業者

①から③について詳しく解説します。

①の事業者の場合

①に該当する事業者は、すでに始まっているインボイス発行事業者の登録申請が必要です。
課税売上高1,000万円超の事業者の場合、現行の消費税法で既に消費税の申告をしています。その中でも基準年度の課税売上高が5,000万円以下の場合に簡易課税を選択している事業者がありますが、インボイス制度は「本則課税」「簡易課税」に関係なく適用されるのです。

②の事業者の場合

消費税法の原則通りなら「免税事業者」です。しかし何らかの理由で自ら課税事業者を選択している場合があります。売上1,000万円以下ですでに課税事業者を選択している場合でもインボイス発行事業者の登録申請が必要です。もし、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間に売上1,000万円以下の免税事業者がインボイス発行事業者として登録した場合には、課税事業者選択届出書の提出をしなくても自動的に課税事業者となります。

③の事業者場合

最終消費者が「個人」か「法人」で異なるのは、次のように取引先が異なるためです。

最終消費者が個人の場合
代表的な例に八百屋や美容院、学習塾、個人経営の飲食店などがあります。現状であれば、事業を営んでいない一般の人が消費税をお店に支払い負担している人です。この場合、免税事業者を継続する方が、課税事業者となるよりも有益なケースとなります。

最終消費者が法人の場合
代表的な例に「接待で利用している飲食店」があります。「最終消費者が個人の場合と変わらない」と勘違いしやすいですが、法人で利用している(領収書のあて名が企業名)の場合は、利用機会の減少につながる可能性を考慮しなければなりません。
ここで問題になるのが利用している企業が「登録番号」を取得している場合です。自社の仕入税額控除のために課税事業者のお店を利用するよう、社内で通達されることが考えられます。

インボイス制度適用の登録手順

インボイス制度の適用を受けるためには「登録番号の取得」が必要です。登録番号は税務署に届出を提出することで取得できます。一般的に申請の混雑具合によりますが、e-Taxで申請した場合は3週間、書面提出で約1カ月かかります。登録が完了すれば、国税庁のHPで登録事業者の確認ができます。ここでは「課税事業者が登録番号を取得する場合(原則)」と「恐らく課税事業者を選択するが、ギリギリまで悩みたい免税事業者」の2種類に分けて解説します。

課税事業者が登録番号を取得する場合(原則)

登録は2021年10月1日から開始しており、すでに登録が始まっています。提出書類は「適格請求書発行事業者の登録申請書」です。書面提出ができますが、e-Taxを利用しての申請も可能です。申請期限は2023年3月31日です。書面提出の場合、申請用紙は国税庁のHPからダウンロードできます。提出先は納税地を管轄するインボイス登録センターです。提出先の確認は国税庁のHPで確認できます。

課税事業者への選択を悩みたい免税事業者の場合

令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に、免税事業者が登録を受ける場合には、登録日から課税事業者となれる経過措置があります。この場合は、課税事業者選択届出書を提出する必要はなく、登録番号の申請届出書を税務署に提出することで対応できます。
ただし、経過措置と取引先が取引を継続するかどうかは関連性がありません。やはり2023年10月1日の開始に間に合うように2023年3月31日までに申請届ができるよう、検討することが必要です。
登録番号がない事業者からの仕入に対し、仕入税額控除が一定期間次の4段階で受けられる経過措置があります。

  • 2023年9月30日まで 控除割合100%
  • 2023年10月1日から2026年9月30日まで 控除割合80%
  • 2026年10月1日から2029年9月30日まで  控除割合50%
  • 2029年10月1日から 控除割合0%

2029年の10月1日からは控除割合が0%なので実質的に控除が受けられないのと同じです。しかし法人は企業により決算期が異なるため、経過措置の対応が期の途中になることがあります。同一会計期間で「昨日(2029年9月30日)までは経過措置が認められたのに、今日(2029年10月1日)からは認められない」ということが起こりうるので注意が必要です。

インボイス制度で利用する適格請求書の項目

今までも商品の売買に伴って請求書や領収書(レシート)が発行されていましたが、インボイス制度がスタートすると従来の請求書や領収書の記載内容では仕入税額控除が適用されません。記載内容の変更点について、現行の「区分記載請求書」をもとに記載事項をまとめました。

  • 請求書発行者の氏名または名称 
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)  
  • 税率ごとに区分して合計した税込対価の額
  • 請求書受領者の氏名または名称

以上が、区分記載請求書で現状すでに対応している内容です。これに次の2つが加わって、適格請求書の要件を満たします。

  • 登録番号
  • 適用税率および消費税額等

登録番号がなければ、仕入税額控除が受けられないのがインボイス制度です。複数税率に対応するために設計されたという経緯から考えても、⑥と⑦は理解しやすいところといえます。
売り手側としては、買い手である取引先から適格請求書の発行を求められた場合は応じなければなりません。また適格請求書発行事業者でない場合は、その旨を伝えなければなりません。
買い手側としては、仕入税額控除を受けるために要件を満たしたインボイス制度(適格請求書)を発行してもらう必要があります。これがなければ、消費税の課税取引であっても認められません。

システム対応も必要

インボイス制度で認められる「適格請求書」は項目が多く、どれが欠けても認められません。いつでも正確な請求書が発行できなければ業務が煩雑になります。経理処理も同様に、会計ソフトの変更などにも対応できているものを利用する準備が必要です。登録番号がない事業者からの仕入は仕入税額控除ができません。取引先名で判別できるようなシステムを利用すると、経理業務が煩雑になることを抑えられます。

まとめ

インボイス制度に必要なインボイス発行事業者になるためには、登録番号が必要です。登録番号は税務署に申請届出書を提出することで登録できます。
インボイス発行事業者になる過程や、経過措置からの移行、日々の請求書処理においても事務処理負担の増大が懸念されます。煩雑になる事務処理に対応できる請求書管理システムの導入がおすすめです。